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「言葉は最高の食料なのです」 〜『調理場という戦場』より

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誰かの発した一言に、耳がピクッと反応し、頭にこびりついて離れなくなる。

先日、本好きが集まるオフ会でそんな体験をした。

斉須政雄さんの『調理場という戦場』

「言葉は最高の食料なのです」

このフレーズは、フレンチレストラン コート・ドールの斉須政雄さんが著書『調理場という戦場』に書いているのだという。


さっそく本を書い、探したところ「東京 コート・ドール」の章にその言葉はあった。

料理人はこの『料理人と仕事』に書かれている言葉のような栄養をどんどん補給しないと駄目だと思う。ぼくにとって、本は栄養です。
言葉は最高の食料なのです。


本ブログで追いかけている「言葉のごちそう」にも通じていて、とても気になる表現だ。


上の言葉は、さらにこんな風に続く。

いい本を読むと元気になりますよね? ぼくの場合は元気になるだけではなく、更にそこで得た言葉の栄養を「お皿の上に表現したい」と思いながら読んでいます。
 (略)
いい言葉を聞いた。こんな風な考えがあるのか。じゃあ、その新鮮な考えを料理にしたら、どうなるだろうか……? どんな結果になるのか、ワクワクしてしまいます。


本を読んで、いい考えに出逢ったら、自分の持ち場でそれを活かす。
具体的なノウハウやTipsでなくとも、なんとか表現できないかと工夫する。


そんなことを実践してきた斉須さんだからこそ、この本のなかには素敵な言葉がたくさん登場する。


例えば、料理に対する心がけとして…

料理を作ることには、創作の喜びだけではなく、分け与える喜びも入ってきます。おいしいものを分かち合いながら人生の喜びも分かち合うことが、レストランの役割でしょう

できあがったものを見て「あぁ、なーんだ」とは、誰でも言うんです。そしてそこで終わることでしょう。でも、プロセスをしっかりと見ている人は、プロセスの結果としてできあがったものを観察して、ニヤッと笑いますよ。「そうなるんだね」とニヤッと笑う体験が大切なんじゃないかと思います。


そして、若者世代に対してはこんな言葉も…

いまのチームメイトにも、言っています。
勝負があるとすれば、お客さんと自分のあいだにだけだ。お店どうしの競争でもなく、チームメイトを相手にしたさもしい勝負でもない」

「純粋で、いい人」が作るものだけをお皿に載せているのではない。もっといろいろな日常生活を取り込んで、料理は成り立っているのです
ぼくは、こういうところを、年中お店で話していますね。最先端の技術うんぬんの話よりも、やはり底辺にあるこういうことこそ大事だと思っているんです。


斉須政雄さんの「言葉のごちそう」がつまった一冊。
読んだだけで満足したくない、自分の血肉にするにはどうするか、そんなことを考えさせてくれる本だった。


ほぼ日刊イトイ新聞「調理場という戦場」

本書は、ほぼ日でのインタビュー連載記事がきっかけで生まれたもので、今も当時の記事を読むことができる。

ほぼ日ブックスとして出版した時の糸井重里さんによる本書紹介文はこうだ。

料理人とグルメだけが読むのは、
もったいない本です。
熱くて深くて、火が出るような言葉が
盛りつけられます。


どんな年齢の人が、
どんな職業の人が読んでも、
身体の奥底から、
勇気が沸きおこってくるでしょう。(糸井重里)

本エントリで引用した斉須さんの言葉が気になった方は、ぜひその一端にふれてもらいたい。

コート・ドール(Cort d'or)

斉須さんが料理長 兼 オーナーをつとめる 東京・港区三田にあるフレンチレストラン「コート・ドール」。


今回の本を読んで「行ってみたい!」と強く思った。
特別な日に、妻と一緒にいくつもり。


※お店の公式HPはないので、以下はRettyの紹介ページ。

参考情報

木沢武男さんの『料理人と仕事』

文中で、斉須さんが何度も紹介されていた木沢武男さんの『料理人と仕事』。

内容としては、料理の方法やお店の収益を上げるための参考書ではありません。木沢さんが大切にしている「料理人としての気持ちの持ち方」が記されている。ただたんに、方法論を書いたものではない。だからこそ、読んだ人が未来にいろいろなものを生むための手助けをしてくれるのではないでしょうか。

すでに絶版になっているようで、中古本がすごい値段で取引されている。
(いつか図書館かどこかで出逢える日を祈って!)

田中伶さんのビジネス書キュレーションサロン

『調理場という戦場』のことを知ったのは「田中伶のビジネス書キュレーションサロン」のオフ会でのこと。あらためて、本書を紹介してくれた Yuri さんに感謝したい。


ちなみに、このサロンでは、オーナー田中伶さんがおすすめのビジネス書や経営書、月刊誌ハーバード・ビジネス・レビューの注目コーナーを紹介してくれる。伶さんの、ほんわかしつつも熱のこもった紹介文を読んでいるうちに、「この本、読みたい!」という気持ちがムクムクと湧いてきて、本好きにとって(財布事情的に)怖いサロンでもある(笑)。


最近は、課題図書を設定して、みなでオンライン上で感想を書くという活動も実施中。今月は最近復刊された『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(アンディ・グローブ著)をみなで読みこんでいる。

「骨太のビジネス書を読みたい!」「どんなビジネス書を読むか迷ってしまう」という方にはオススメです。