今月初めに届いた 致知2011年4月号。
「巻頭の言葉」では、伊與田覺さん(論語普及協会学監)が雑誌名の由来でもある「格物致知」について解説されていた。月刊致知を定期購読して すでに5年になる僕だが、この言葉を人にうまく説明できないことに気づき、今回その由来をしっかりと調べてみた。*1
「格物致知」という言葉が収められているのは、中国古典のひとつである『大学』であり、『論語』『孟子』『中庸』とあわせて「四書」と呼ばれている経典だ*2。『大学』は「四書」のなかでも最初に読むべきものと言われており、その目的は、大人(たいじん)、すなわち、人によい影響を及ぼす人物 となるための実践方法を説くことなのだとか。
『大学』の第一章には、3つの実践項目(「明徳を明らかにする」「民を親しましむる」「至善に止まる(とどまる)」)が提示されていて、これらは「三綱領」と呼ばれている。
この三綱領の教えを具体的にどう実践するかを説いたのが、次の一節だ。
古(いにしえ)の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ず其の國を治む。其の國を治めんと欲する者は、先ず其の家を齊(ととの)う。その家を齊えんと欲する者は、先ず其の身を修む。其の身を修めんと欲する者は、先ず其の心を正しうす。其の心を正しうせんと欲する者は、先ず其の意(こころばせ)を誠にす。その意を誠にせんと欲する者は、先ず其の知を致す。知を致すは物を格(ただ)すに在り
物を格して后(のち)知至る。知至りて后意誠なり。意誠なりて后心正し。心正して后身修まる。身修まりて后家齊う。家齊いて后國治まる。國治まりて后天下平らかなり
ここに示された格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下の8つは「八条目」と呼ばれるもの。なかでも実践の最初の一歩というべき「格物致知」は、知を致す(=生まれながらに与えられている知恵を極めていく)こと、そしてそのために、物を格す(=突き詰めて言えば、自分を正す)ことだと伊與田覺さんはいう。また、金谷治さん訳注の『大学・中庸』には、朱子の記した解説『大学章句』内の補稿も載っており、「致知在格物」というフレーズの意味を「自分自身の知識を十分におしきわめたいと思うなら、世界の事物についてそれぞれに内在する理をきわめつくすべきだ」だと説明している。
解説によって細かなニュアンスは異なるけれど、要は、国を正しく導くにはまず自分自身を磨くことから始めよ、というメッセージだと思う。いま日本がおかれている状況を考えたとき、心していきたい言葉だ。
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