先日、100冊倶楽部ML や twitter で話題になっていた書籍『知の現場』を読み終えた。
- 作者: 知的生産の技術研究会,久恒啓一
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/12/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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監修は久恒啓一さん、編者はNPO法人知的生産の技術研究会(以下、知研)のみなさん(プロジェクトリーダーは知研事務局長の秋田英澪子さん)。
http://tiken.org/tinogenba/
この本は、各界で活躍する21人の“知の志士たち”に「知の現場を取材させてください!」とお願いしてインタビューした内容をまとめたもの。20代から103歳(!)の知的生産のプロたちが、自ら情熱を傾ける「現場」について生き生きと語る姿に、読んでいるこちらもまるで訪問して話を聞いているかのようなワクワク気分を感じた。
本書では、「知の現場」をどう捉えているかをもとに「書斎派の人々」「フィールド派の人々」「出会い派の人々」「場所を選ばない人々」と分類して21人を紹介されていた*1。
気になる箇所がたくさんあったので、著者別に「知の現場」をどう定義しているかと、気になった発言を抜き書きしてみようと思う。
1回目は、「第1章/書斎派の人々」の6人の方。
寺島実郎さん(http://mgssi.com/terashima/menu_terashima.php)
(1) 知の現場
「知の現場」のことを、本を書いたりしている書斎ということにするなら、文庫*2を移してきたここが、私の「知の現場」の拠点であり、中核ですが、絶えず移動時間に収斂させているというのが本音です。
書斎と移動時間。
(2) 発言メモ
私の大事にしているキーワードは「相関」です。これは課題が目の前に次々と出てきていて、これがスパイラルのように拡大し収斂していっている状態のことです。(中略)
よく「知的生産」というけれど、それは「問題解決」のことです。
相関を考えて収斂させることで問題解決につなげることで、知の結晶化(書籍や論文)ができるるってこと?
奥野宣之さん(http://www.ab.auone-net.jp/~a9908423/)
(1) 知の現場
明確な発言はないが、手作りの書斎をイメージしているようだ。
北康利さん
樋口裕一さん(http://www.higuchi-book.com/)
(1)知の現場
明確な定義はないが、次のような発言あり。
知的生産のツールは何もありませんし、とても効率が悪く、整理もまったくしていません。
執筆は、休み休みやっています。執筆の途中で、しょっちゅう、ふらっと家族のいる部屋に行ったり、音楽を聴いたり、テレビを見たり、コーヒーを飲んだりしています。朝から晩までずっと休み休みやっていることになりますね。
(2)発言メモ
長時間仕事をしても自分を飽きさせないために、「自分はすごいものを書いているのだ」「俺は天才だ」「誰も書いていないようなことを書いているのだ」「誰も気づかないことを書いているのだ」と自分自身に思わせるようにしています。
奥野宣之さんの発言にも通じる。
翻訳のススメ
原著が持っているニュアンスを再現するために重要なことは、「自分はこれでいくと決めること」です。これは本を書くときも重要で、翻訳のおかげで学べたことかもしれません。
(中略)
世の中のできるだけ多くの方が、「翻訳」をやるべきだと思っています。ものすごく勉強になりますよ。
なるほど。お気に入りの歌の歌詞でもいいのかな。
武者陵司さん(http://www.musha.co.jp/)
(1)知の現場
そのものズバリではないけれど、こんな発言あり。
これからも今までやってきた経済・金融を中心とした情勢分析をやり続けたいと考えて、情勢分析と情報発信をしていく環境をつくりたいと思っています。
なお、情報源として一番役に立つのは「ウォール・ストリート・ジャーナル」だとか。
(2)発言メモ
現実に世界の文化や知見、インテリジェンスは明らかに英語をベースに展開されています。はっきり言って1億人の知恵の集まりでは話になりません。その点40億人の知恵が集まっているのが英語です。40億人の知恵が集まっているベースのうえで話をしないとほとんど世界で理解されません。
日本の問題は金融だけではなく、その背後にある企業のモチベーションも大きな問題です。企業なら利益を最優先して当たり前です。企業は資本のリターンが持続される条件を証明し続ける使命があり、それが社会を豊かにするということとの論理の一貫性があるはずです。
そのうえで、いま一番重要な投資の対象は「地球環境の再生」で、「エネルギー革命」に取り組んで「新たな雇用を産み出」すことが重要なのだとか。
望月照彦さん(http://www.laboseum.com/)
(1)知の現場
鎌倉・極楽寺に「構想博物館」という建てておられ、ここが「知の現場」かと思いきや、さにあらず。
実は「構想博物館」は頭の中にあるのです。モノがあるみたいでしょう?デモ、構想というモノは飾ることができません。
「構想博物館」というのは、ハードのことではありません。スゴイものがあると思われて来ると、大したことのない庵のようなものがぽっとあるだけだから、びっくり仰天でしょうけれども、飾るものはなくて、すべて私の頭の中にあります。
(2)発言メモ
強靭なアイデアやコンセプトは、溶け込んだ情報をパッと結晶化させる核や触媒となるものでしょう。それらを上手に情報の海に投げ入れることが大切だと思います。
コンセプトや結晶化作用を誘発させるのは問題意識というフックです。自分のDNAを撹拌させる問題意識、または外にある情報を結晶化させる問題意識をどう明確に持つかが大切です。
自分の生き方が一番大きなアウトプットだと思っています。そのプロセスは、ライフスタイルではなく、ライフウェアマネジメント、生活作法のマネジメントです。
私はネットワークは、フットワークとパッチワークになるべきだと思います。フットワークとは、足で歩ける範囲で物事を考えましょうということ。パッチワークというのは、物事を一つのキルティングみたいにパッチにして、それらをつなげてグローバルにしていくことです。
感覚的だけど独創的な言葉やフレーズがたくさん。
(参考)『知的生産の技術』
- 作者: 梅棹忠夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1969/07/21
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