「利他主義の複利」という言葉、ご存知だろうか?
分かるようでわからない、パッと聞くと「何???」と頭にハテナが浮かぶこの言葉。前エントリで紹介した本『ツイッターで学んだいちばん大切なこと』に登場する、素敵な考え方だ。
ツイッターで学んだいちばん大切なこと――共同創業者の「つぶやき」
- 作者:ビズ・ストーン
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: 単行本
ビズ・ストーン氏から学ぶ「利他主義の複利」
同書の著者 ビズ・ストーン氏は、twitter の共同創業者。
2006年 オデオ社のハッカソンで、ジャック・ドーシー氏とのペアで生みだした twitter。ブレイク後の 2009年に、ストーン氏は「コルベア・レポー」というテレビ番組に出演する*1。このとき、司会のコルベア氏から出演者に贈られたもののなかに、ある素敵なものが入っていた。
収録後、僕とリヴィアは番組からプレゼントをもらった。おそらくテレビ番組に出るともらえる、よくある記念品の類なのだろう。番組名の入った帽子とTシャツ、水がかごに入っている。だがもうひとつ、僕に大きな影響を与えたものがあった。ドナーズ・チューズという非営利組織の、25ドル分のギフトカードだった。(p.247-248)
ドナーズ・チューズ(donorschoose.org)は、「公立学校のためのユニークな慈善団体」で、「全米各地の公立学校の教師が、授業で使う教材や備品など必要な物をサイト上で知らせ」、「その中から関心のあるプロジェクトや、近所の学校、あるいはすばらしい授業をやっている先生やとくに困っている先生を自分で選んで寄付をする」ためのサイトだ。
コルベア氏は、自らこの活動を応援するとともに、番組ゲストにもこのサイトで使えるギフトカードを贈っていた。受け取ったストーン氏は、小学校2年生を担当する先生からのリクエスト(=『シャーロットのおくりもの』がクラスの人数分必要!)に応えて、寄付をした。力になれたことそのものが嬉しかったし、その後 本を受け取った子どもたちからのお礼のカードが届いたのが何よりも嬉しかった、と書いている。
で、この喜びは、寄付した人とされた人だけにとどまらず、広がっていくのだとストーン氏は言う。
ドナーズ・チューズを通して、利他的な行ないが力強い連鎖を生むと知ったのだが、ほかにも、おそらくさらに大きな気づきがあった。(略)その寄付は世界を変えたわけではないけれど、何人かの先生がしたい授業をするのには役立った。(略)こう考えていくと、スティーブン・コルベアが影響を与えたのは僕だけではない。彼の贈ったものは教師に届き、子どもたちにも届き、さらには子どもたちが得た有意義な経験や知的な成長にふれるすべての人に届くことになる。(p.250)
「利他主義の複利」とは、この加速度的な広がりのこと。
番組に迎えたゲストにギフトカードを贈る形でスティーブン・コルベアが行った小さな善意は、こうして加速度的に広がった。僕はこれを利他主義の複利とよんでいる。(p.251)
僕が twitter や facebook などのソーシャルメディアを気に入っている理由の1つは、この「利他主義の複利」を生み出す拡散力があるからだ。信頼できる(=フォローしている or 友人として繋がっている)人の発言や紹介であれば、活動している人そのものを知らなくてもそこに何らかの想いを積み重ねていくことができるし、その活動に対して自分がとったアクションをまた友人たちに自然に伝えることができる*2。
身近な人に対しても、また、遠く離れたまだ見ぬ人に対しても、自分のアクションによって何らかのよい影響が伝搬できれば、とても心豊かに気持ちよく生きられるはずだ。ソーシャルメディア隆盛のこの時代だからこそ、「利他主義の複利」という考え方が、もっと広がればいいなと思う。
3つのおすすめアクション
実際に行動してみると「利他主義の複利」の効果が実感できるので、以下に僕自身がやってみておすすめのアクション3つをご紹介…。
1.プロジェクトや活動を応援!
このブログのサイドバーには「応援しています!」コーナーをつくっていて、友人・知人の興味深い活動、自分が使って心落ち着いたり笑顔になれるグッズやサービスへのリンクを張っている。2014年11月現在、紹介しているのは以下のリンクだ。
- 信州のど真ん中、梶原農園
- 幸せなキャリアについて日々考えてみる
- Fujiko Suda | ワークライフ
- ツバメかんさつ全国ネットワーク
- ポストマップ
- MERRY PROJECT
- エムズシステム「波動スピーカー」
- 無垢板テーブルと椅子の専門工房「BC工房」
- THE BIG ISSUE JAPAN
- Book Crossing Japan
- Chabo! - 本で、もっと、世界にいいこと。
- リメンバーしまね
- 映画うまれる
- ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)
- ハタチ基金
- Goose house
- 人間塾
- コミュニティマネージャーズ・コミュニティ
折に触れて、ブログや Facebook、twitter でも紹介しているのだけれど、その結果だれかが気に入ってくれたり、購入してくれたり、さらに誰かに紹介してくれるのがとても嬉しい。この夏には、上のリストにもある友人・梶原くんち(梶原農園)のフルーツを多くの方が買ってくれたことは記憶に新しい。僕自身がとても心豊かな気持ちになれました。あらためて感謝です!
2.本を贈る
贈り物が自然にできる人って素敵だなと思う。
僕はどうにも構えちゃってぎこちなくなっちゃうのだけれど、そんななかでも本はわりと自然に渡せるプレゼントだ。
相手のおかれた状況を思い描きつつ、「こんなことで悩んでいるんじゃないか」とか「こんな風に背中を押してほしいんじゃないか」を考えながら、あるいは「彼(彼女)なら、この本のなかの何かがヒントになるんじゃないか」と想像しながら本を贈るのは、とても楽しいし、ワクワクする。時間はかかるけど、それだけ価値のある行為だと思う。
3.気になるプロジェクトへの寄付・出資・活動支援ボランティア
ストーン氏が紹介していたドナーズ・チューズにも似ているが、最近は日本でもクラウドファンディングのプロジェクトを目にすることが増えてきた。僕がよく目にしているサイトは「READYFOR?」。友人を経由したご縁が重なって、これまでいくつかのREADYFOR上のプロジェクトを応援してきた。それは、「カンボジアに学校を建てよう」とか「気仙沼の椿でハンドクリームを商品化しよう」という、今までの自分では決して触れることのなかった世界で頑張っている人たちの応援だった。
https://readyfor.jp/
また、「ハタチ基金」も継続的に応援しているプロジェクトの1つ。
「東日本大震災発生時に0歳だった赤ちゃんが、無事にハタチを迎えるその日まで。」のコンセプトに共感して、個人サポート会員になっている。2年前の同期会で集まったみなでも支援できたのは、とてもよい思い出にもなった(関連エントリ)。
http://www.hatachikikin.com/
この他、ボランティアとして支援させてもらった活動もある。今日から第二弾が公開される映画「うまれる」シリーズ。
その第一弾ではドキュメンタリー映像から発言を文字起こしするトランスクリプトという工程をお手伝いした。(関連エントリ)
自分が担当したシーンが映画のなかで使われていたのを観て、なんとも嬉しく誇らしい気分になったものだ。
http://www.umareru.jp/
もっと身近な例としては、ホームレスのかたが路上で販売している雑誌「BIG ISSUE」を購入し、販売員さんと会話したりもしている*3。
まとめ
もちろん、僕個人が世の中のすべての活動を応援することはできない(財力的にも時間的にも…)。
それでも、自分の問題意識や願いに関わるプロジェクトを目に(耳に)したときに、その活動で助かる人や中核にいる人への応援の気持ちを、何らかの行動で示したいなと思う。
そこでかかったお金や時間は、それを求めている誰かに届き、さらにはこの世の中をほんの少しでもよくすることにつながるはずだから…。
「利他主義の複利」とは、これらのことを端的に表しており、僕にとっての新たな「言葉のごちそう」になった。
関連しそうな本
『評価と贈与の経済学』(内田樹、岡田斗司夫 著)
- 作者:内田樹,岡田斗司夫 FREEex
- 発売日: 2013/02/23
- メディア: 新書
「贈与経済」という言葉で、利他の行動が循環する社会について語られている。
『GIVE&TAKE』(アダム・グラント著)
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
- 作者:アダム グラント
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: ハードカバー
ずっと気になりつつ未読だった本。監訳者・楠木建さんのまえがきを読むと、こんな記述に出逢う。
ギバーは「ギブ&ギブン」だ。見返りなど関係なしに、まず先に人に与える。その結果、はからずも「どこからかお返しをもらえる」というわけだ。
成功するギバーは、「自己犠牲」ではなく、「他者志向性」を持っている。
本エントリを機に、読んでみたい。
*1:当時の動画はこちらから http://thecolbertreport.cc.com/videos/4qhn4o/biz-stone
*2:もちろん、ツールの使い方によっては悪意や憎悪も広がっていくので、情報自体の見極めやリアクション方法の選択は必要なのだけれど…。
*3:1冊350円のうち、180円が販売員さんの収入になる。