以前のエントリで紹介した『人勢塾』の影響を受けて、増田弥生さん、金井壽宏さんの共著『リーダーは自然体』を読んだ。
この本には、はた目からみるとすごいキャリアを歩んできた増田さん(リコー→リーバイス→ナイキ→現在はフリー?)が、専門であるリーダーシップ開発・組織開発について、文字通り自然体で金井さんと対談している様子が収録されている。
リーダーシップは誰の中にもある
興味深く読んだ箇所を抜き書きしてながめてみると、増田さんが「リーダーシップは誰の中にもある」ということを心底信じているのだなというのがわかる。
働く組織においてリーダーと言うときは、肩書きや立場を指すことが多いのですが、リーダーシップは発揮するものであり、行動の形、存在の仕方です。だからみんながリーダーになりえます。(p.15)
リーダーシップは、筋肉と同じで誰にでもあると思っているからです。どんな人にもリーダーになる可能性はあります。自分にはその能力がないと言う人は、リーダーシップの力を使っていないか、鍛えていないだけではないでしょうか。(p.25)
私は職制上のリーダーだったときも、自分についてきてくれる人たちをフォロワーではなく、「リーダー仲間」だと思って働いてきました。本当はリーダーになりうるのだけれど、まだ自分がそうだとは自覚していない人たち、あるいは自分の内側からこみ上げてくるものを今はまだ言葉にできていない人たち、そういう人たちのそばに私がいることで、みんながリーダーに変容できる。そのお手伝いをすることが、りーダーである私の役目ではないかと思うのです。(p.217)
一方、ご自身のリーダーシップの発揮については、自身をあるがままに受け入れることができた(=自己受容)のがポイントだったそうだ。
私は今のままで大丈夫。ありのままでOKなのだから、プロらしく仕事をしなくてならないと、自分に対して宣言しました。(中略)
「自信」は、「自分」を「信じる」と書きます。何か特別なものを手に入れることではなくて、今のままの自分で大丈夫だと信じることが「自信」です。(p.96-97)
自分の潜在能力を引き出すプロセスはとても楽しいものです。自分にあるはずのギフト、もっているはずなのに使っていなかった能力を駆使するのは、誰にとっても心躍る経験となります。(略)
自己受容は、人を巻き込んでいくプロセスにも欠かせません。なぜなら、自分自身を巻き込めない、つまりその気にさせられない人に、他者を巻き込んで、その気にさせることはできません。「自分を巻き込む」とは、表現を変えれば、自分が心の底から何かを信じて行動できる状態であり、そういうときに、他の人はその人を信じてついていこうという気になるのです。(p.246)
その上で、組織としてリーダーを育てるためには、
- ワクワクするようなビジョンをかかげ
- 実際にリーダーシップをとってみせることで
- みなの「秘められたリーダーシップ」に火をつける
ことが大切なんだと感じさせてくれる。
私は、前述した「アジア太平洋地域が、このリージョン域内で働く優秀な人材にとって最も働きたい場所、ビジネスの目標を達成するうえで必要とされる人材を常に引き留め、ひきつける組織だと位置づけられるようにする」というビジョンに基づき、各カントリーの主要ポストの現地採用者比率アップや、リージョンの部門長クラスにおけるアジア太平洋地域出身者比率のアップ、各カントリーの事情に応じた多様性の実現などについて具体的な数値目標を立てていました。(p.162)
経営陣が20人いたらその20人がそれぞれ個性あるリーダーであり、追随するリーダーたちの手本となっていることがスタートです。そして、その20人みんなが自らの成長を心がけ、お互いのよさを見ながら助け合っていれば、社員たちも成長したいと思い、互いに助け合うはずです。そういう企業では、みんなの秘められたリーダーシップが引き出されやすいでしょう。
必要とされるリーダーのタイプを企業側が見定めておくことも重要でしょう。自社の価値観で最も大事にしていることを日々体現できるリーダーが多くいる企業は、自社の差別化に成功しています。(p.229)
いま自分のいる現場で、自然にリーダーシップを発揮していきたいと強く思わせてくれた一冊だった。
関連エントリ
- 前向きの懸念(2010-9-12)