昔深く関わったことに、今取り組んでいる分野で偶然接することがある。
今年7月に人事担当になり、関連する先達の知を模索するなかで『人事異動』という本に出会った。
- 作者: 徳岡晃一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/09
- メディア: 新書
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同書では、「人事異動」について冒頭でこんな意味づけがなされている。
人事異動は、人を慣れ親しんだ環境から引き離す。人材を異質な場に放り込み、異質な体験を通じて目を見開かせ、新たな発展につなげるドライビングフォース(駆動力)にもなりえるのである。(p.8)
人事異動の価値を語る一方、「ムダに人を動かさない」という節タイトルで、知識創造型人事異動という考え方が紹介されていた。
これらの問いに誠実に答えられる異動が組まれるようになれば、企業の知の体系がはっきりし、組織や個々人の志も高く保たれるだろう(中略)
したがって、個々の異動はSECIプロセスのどの局面を目的にしたものかを明確に意図できる。会社は社員に原体験を積んでほしいのか(S)、コンセプトを創造してほしいのか(E)、既存事業を大きく発展させてほしいのか(C)、じっくり考えて改善してほしいのか(I)など、期待するものが明確になる。(p.111-113)
企業内情報流通やナレッジマネジメントに関わった方なら、「おや?」と思うかもしれない。僕も、10年前に出会った言葉との思いがけない再会に驚いた。
SECIプロセスとは、野中郁次郎さんが提唱した「知識変換の4つのモード」のことで、次の4つの言葉の頭文字を取ったもの。
- Socialization(共同化)
- Externalization(表出化)
- Combination(連結化)
- Internalization(内面化)
個人が仕事を通じて得た暗黙知を、グループ内の暗黙知として再創造(S)し、それを形式知として言語化する(E)。さらには、個別の形式知から体系化された形式知へと連結(C)し、その形式知を使って仕事をおこなうなかで新たに個人の暗黙知へと内面化していく(I)。
個別の人事異動に対して、その目的は何か、このSECIプロセスのどこにあてはめるべきかを考える。今後の個人テーマにしていきたい。
参考
SECIプロセスについては、 Knowledge Management の原典ともいうべき本『知識創造企業』に、事例を交えながら詳しく解説されている。
- 作者: 野中郁次郎,竹内弘高,梅本勝博
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 1996/03/01
- メディア: 単行本
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なお、『人事異動』に導いてくれたのは野中さん、徳岡さんらが書いた『MBB(Management By Belief)』という本だ。人事に関わる人はこちらもオススメ。
MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
- 作者: 一條和生,徳岡晃一郎,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/06/18
- メディア: 単行本
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追記
twitterにこのエントリを紹介したら、同時期にナレッジマネジメント施策を推進していた他社の友人からリプライがあった。「思いがけなく出あうこと」を邂逅(かいこう)と言うのだそうだ。コメントに感謝して、エントリタイトルも変更しておいた。