ここ1ヶ月半の間に、『ネットコミュニティの設計と力』の読書会を2回開催した。
1回目は facebookグループ上で1ヶ月間をかけて読み込むオンライン読書会。
2回目は、東京コミュニティマネージャーMeetup主催のリアル読書会だ。
以下では、それぞれの読書会を通じて印象に残ったこと、および、両読書会を実施して辿りついた結論「繋がって強くなる」についてご紹介します。
オンライン読書会でのディスカッション
Facebookグループ「"【CMC読書会】~コミュニティ運営のヒントを本から学ぼう!~"」上では、2015年10月1日から10月31日まで19個のスレッドが立ち上がり、計14人の方から発言があった。
ディスカッションテーマ
やりとりしていたスレッドはこんな感じ…。
- 序章から:【ネット完結? リアル接続?】
- 第1章から:【どっちを重視? 知り合いとの交流 vs. 新しい人との出逢い】
- 第2章から:【マンネリ化を防ぐには?】
- 第3章から:【「立ち上げ期」の工夫】
- 第3章から:【熱量を上げすぎないことの重要性】
- 第4章から:【複数の集団に自由に出入りできるのは人間だけ】
- 第4章から:【文字情報は、視覚情報に勝てないの?】
- 第4章から:【ネットで信頼関係はつくれない?】
- 第5章から:【“着陸”するデジタル・コミュニティへ?】
- 第6章から:【コミュニティが生まれる瞬間】
- 第6章から:【リアルとネットのハイブリッド社会】
「バリエーション」「時間」「実践事例」「ハイブリッド」
読書会前の「気になる章アンケート」では、執筆の第3章「人が集まるコミュニティのつくり方」を挙げる人が一番多かった。
一方、実際に話し合った際には、序章での「リアル接続/ネット完結」×「匿名/実名」×「open/close」の3つの組み合わせのバリエーションが盛り上がった(各自のネット歴も披露されて面白かった)。あと、第4章のなかで出てきた「視覚情報」「共に過ごす時間」というキーワードをきっかけに、会うことも大事だが「意識を向けた時間」が大切じゃないか、という話にもなり、議論が白熱した。
また、第5章にからめては、身体性・場所性・ローカル性への着陸事例として、読書会メンバが所属する地域やコミュニティでの活動事例を紹介してもらえた。具体的な活動をどんな思いで実施しているかの話が聞けると、聴く側もイメージがわいてくる。
最終的には、6章での近藤さんの提言「リアルとネットのハイブリッド」というあたりで腹に落ちた感がある。
「リアルでないと得られないもの」をリアルな世界で得つつ、「ネットを使わないと得られない共感」をネットを使って得ているのだ(p.222)
リアル読書会でのディスカッション
11月10日、渋谷ヒカリエにある Creative Lounge MOV にてリアル読書会を実施した。こちらは、当日飛び入り参加の方も含めて合計14人で本書を題材に話し合った。
東京コミュニティマネージャーMeetup Vol.3
東京コミュニティマネージャーMeetup オーガナイザーの市川裕康さんからの挨拶のあと、参加者全員での自己紹介。
そして、僕からオンライン読書会の議論などもふまえて各章の特徴的なキーワードを紹介させてもらい、その後で各テーブルでのディスカッションタイムをとった。
コミュニティマネージャーの3タイプ
20分後まだまだ話し足りない雰囲気のなかで全体シェアを開始したのだが、「コミュニティ形成にも3タイプがあるよね?」という話が出て、これがなかなか盛り上がった。こんな分類だ。
- ヒーロー型(カリスマ性でひっぱる。運営は別の人が中心)
- 黒子型(みなが喜んでくれることを喜びとする)
- コネクター型(有機的に人と人をつないでいく)
試しにアンケートをとってみると、参加者14人の自覚するタイプは、ヒーロー型 1人、黒子型 5人、コネクター型 8人という結果だった(ちなみに、僕は自称・黒子型)。あなたは、どのタイプだろうか?
「共に過ごす時間」の価値
また、ネットコミュニティでも「会うこと」の価値が大きい、という話も複数の人が話していて印象に残った。そこには、ネットコミュニティ上で相手の存在を感じられるか、会っていない時間を想像できるか、ということがからんでくる。別の本にあった「SNSには黙って囲めるテーブルがない」という成毛眞さんの言葉を紹介すると、うなづく人が多数!
期せずして、このリアル読書会が、4章での「共に過ごす時間」や5章での「身体性・ローカル性への着陸」を体感する場になった感じだ。
グループメッセージアプリ Syncが活躍
なお、この日は実験的な試みとしてグループメッセージアプリ Sync を利用して、参加者間でのメッセージ共有をおこなった。
www.wantedly.com
本アプリ開発責任者の Wantedly 川崎さんから直々にレクチャを受けるという幸運もあり、自己紹介の補足情報や関連キーワードの紹介、会場風景の写真、全体シェアタイム途中で関連情報URLを貼り付け、誰かの「おぉ!」と思った発言をログに残すなどなど、面白い使い方ができた。
twitterのハッシュタグで参加していない人も含めてやりとりするのもいいけれど、今回のように参加者限定でのハイコンテキストなグループだと、細かな説明がなく、URLだけとか、キーワードだけのつぶやきでも意味が通じるので、こういう使い方はもっと広げていくべきだと感じている。
結論:繋って強くなる
『ネットコミュニティの設計と力』の第6章は、監修者・近藤淳也さんのこんな言葉でしめくくられる。
人間は、人とのつながりを求める生物である。何らかのコミュニティに属すことができなければ、多くの人は幸福を感じることができない。インターネットは、そうした人間に、人とつながるための新しい方法を提供し始めた。そしてこれからさらに、よりリアルに近い方法でつながることができるようになっていくだろう。
その技術を、どのように組み合わせて生きていくかは、人それぞれだと思う。インターネットとはどういうものか、ネットにできることとできないこと、それらを把握しながら、自分らしい活用の仕方ができるとよいのではないだろうか。
(略)ネットが遍在した社会がこれからさらに訪れるだろう。その社会の中で、より多くの人が自分の居場所を発見し、幸せを感じられるような社会へと進んでいくことを期待したい。
この本『ネットコミュニティの設計と力』のテーマに興味を抱く人、なかでもコミュニティの運営側として動いている人(≒コミュニティマネージャー)にとっては、自らの動きでそんな社会の実現に貢献できることが喜びに違いない。
読書会を通じて見えてきたもの
今回、オンラインとリアルで本書読書会を開催して、見えてきたのは次のようなことだ。
- どんなコミュニティにも当てはまる成功法則やTipsというものは存在しない。
- けれど、コミュニティを形成する「人」の側面は、「システム」面以上に活性化に影響を与える。
- コミュニティ運営の成否を握る、黒子(他者の世話を焼くのが好き)やコネクター(つながりを演出することに何とも言えない喜びを感じる)は、どのコミュニティにも存在する。
- そして、この人たちは、同じような価値観を持つ人同士でつながることで大いなるヒントを得ることができる。
今後の「地域密着人口」が増える社会では、コミュニティマネージャー的な役割がさらに必要になってくるだろう。それぞれの人が各自の持ち場で経験したものを持ち寄って繋がることで新しい知見や知恵が生まれ、より強い存在になっていくにちがいない。
そんな繋がる場やきっかけを、オンライン&リアルを含めて数多くつくっていきたい。
2回の読書会を通じて、そんなことを考えた。
(参加していただいた全ての方に感謝!)
おまけ:コミュニティマネージャーはたこ焼きがお好き?
リアル読書会で用意した軽食が、こちらのたこ焼き。
お店で受け取ってから会場まで、ソース臭をぷんぷんと漂わせながらビル内を移動するのでドキドキでした(特に、エレベータとか…笑)。とはいえ、参加したみなさんからも「おいしい!」と評判が上々だったのでよかった。
実は、本エントリの仮タイトルは、投稿直前まで「コミュニティマネージャーはたこ焼きが好き」でした。「他人の世話を焼く→他己焼き→たこ焼き」というロジックだったのですが、ちょっと無理があるなぁと思い直して変更(笑)。せっかくなので、たこ焼き写真だけは載せておきます。
(リアル読書会でのおつまみ「たこ焼き」。撮影:Ichiharaさん)
※本エントリ冒頭の写真は、リアル読書会での一コマです。撮影してくれたKobayashiさんに感謝!
『ネットコミュニティの設計と力』関連エントリ
本エントリで『ネットコミュニティの設計と力』については5本目。
あと、1本くらい書くつもりです。