「千里の道もひと足ずつはこぶなり」
これは、我が家の日めくりカレンダーに書かれていた、今日の言葉。
(ちなみに、言葉の主は宮本武蔵!)
一体いつ頃から、カレンダーにはこんな格言や名言が書かれているんだろう?
いま読んでいる『フランクリン自伝』によれば、少なくとも 280年前にはこうした教訓入りカレンダーが存在しており、街なかで売られていたことが分かる。
ベンジャミン・フランクリン氏といえば、アメリカ独立宣言の起草に関わったり、雷が電気であることを発見したりとマルチな才能を発揮した人(100ドル紙幣の肖像としても有名)だが、もともとは植字工から身を立て、印刷業を起こした人でもある。(十三徳という習慣化のすぐれたメソッドも発明・実践した人だが、それは後述)
貧しきリチャードの暦
「貧しきリチャードの暦」(Poor Richard's Almanack)は、そんなフランクリン氏がリチャード・ソーンダーズという名前で 1732年から25年間発行していた生活暦のこと。
"Poor Richard Almanack 1739". Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
中には数々の言葉が散りばめられていたらしい。
私はこれを面白くもあり、為にもあるものにしようと苦心したので、おかげで非常に売行がよく、年々1万部近くも売れ、利益もずいぶん上った。(略)私は暦は他の本など買わない一般市民の間に教訓を伝える恰好の手段になると思った。そこで暦の中の特殊の日と日との間にできるわずかばかりの余白をすっかり諺風の文句で埋めた。(p.156)
富に至る道
1757年には、発行してきた暦から集めた諺を、賢い老人が演説のなかで紹介するストーリーに仕立て上げ、翌年の「貧しきリチャードの暦」の巻頭に載せた。それが「富に至る道」と呼ばれる文章である。
この文章は、岩波文庫『フランクリン自伝』に付録として収録されているのだが、読み物としてすこぶる面白い。前段の解説にひきつづいて、エイブラハムと呼ばれた老人の演説はこんな風に始まる…。
「わたしの知恵を借りたいとおっしゃるのでしたら、よろしい、簡単明瞭なところをお聞かせしましょう。『賢者には一言にして足る』、また、『言葉多くしても桝目にならず』ですからな、貧しいリチャードの言葉を借りて申せば」
こんな調子で“貧しいリチャードの言葉”がどんどん引用されていきながらストーリーは進む。
読みながら「リチャードの言葉、多いなぁ」「いくつ引用されているだろう?」と気になったので数えてみた。
なんと、103個もあるではないか!?
(勢いで抜き書きしちゃったので、リストを掲載しておきます 笑)
「富に至る道」で引用される諺・教訓
「富に至る道」から、リチャードの言葉として紹介されている諺・教訓などの名言が103個あった。
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