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『影響力の武器』“6つの原理”と防衛法まとめ

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前回は、『影響力の武器』で解説された6つの原理から「コミットメントと一貫性」を選び、その功罪と防衛法について書いた。


今回は、470ページ超にぎっしり記述されている6つの原理について、気になる記述と日常生活での「あるある」シーン、および、それぞれの防衛法をまとめた。

帯の言葉にあるような「だまされない賢い消費者になる」ため、そして「人を説得するやり方を学ぶ」ための参考としても、いつか誰か(未来の自分にも?)役立つことを祈って。

『影響力の武器』6つの原理

まず、6つの原理についてのおさらい。

本書で紹介されているのは、人間の行動をつかさどる基本的な心理学の原理、すなわち、次の6つの「影響力の武器」だ。

  • 返報性
  • コミットメントと一貫性
  • 社会的証明
  • 好意
  • 権威
  • 希少性

「コミットメントと一貫性」の功罪 〜『影響力の武器』でハッとしたこと - ヒト感!!


以下、それぞれの原理について書いていくと……。

返報性──昔からある「ギブ・アンド・テイク」だが……

返報性のルールは、簡単にいえば「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない」ということだ。

このルールは人間社会・文化に広く浸透しており、「すべての人間社会がこのルールを採用している」という報告もあるほど。その背景にある気持ちが、こんな風に書かれていた。

私たちの多くにとって、恩義を受けたままにしている状態というのはとても不快なものです。ずしりと肩に食い込むこの重荷を早く下ろしてしまいたいという気になります。(p62)

実感として「確かに!」と合点がいく。

利点もたくさんあるルールだが、この気持ちを悪用されるケースもやっぱりある。

その防衛法は、「状況の定義し直し」だ。
最初の申し出を拒否するのは、意外と難しい(「拒否したら譲歩を引き出す」作戦もある)。

なので、「む、これは売りつけようとしているな」と感じたら、その前に受け取ったものを贈り物ではなく、販売の手練手管だと考え直す、をやってみたい。これは頭の中でできる対策なので、覚えておくとよさそう。

コミットメントと一貫性──心に住む小鬼

この武器については前回記事に書いたので、ここでは印象に残った2箇所をご紹介するとどめておく。

推薦文コンテストは販売促進プラン!?

大企業が実施する、「25語、50語、100語以内の」推奨文コンテストは、この原理を活用したものだ、という指摘。

参加者は、滅多に手に入らない景品につられて、自主的に推奨分やエッセイを書きます。(略)彼らは、課題に選ばれたものの魅力を証明する文章を書き、その結果、自分で書いたことを信じるようになるという魔術を経験したのです。(p.133)

なるほど納得、である。

レストランの無断キャンセルを防ぐ方法

つづいては、本書第三版から強化された読者レポートからの一節。

予約係が電話を受けたとき、「変更がありましたらご連絡ください」と言うことをやめさせました。代わりに「変更がありましたらご連絡いただけますか?」と相手に尋ね、答えを待つようにさせたのです。(p.138)

簡単に使えそうだし、使われてもいそう(笑)。

この小さな工夫は、電話だけではなく文字ベースでやりとりするシーン(メールやSNS、チャットなど)でも効きそうだ。

社会的証明──真実は私たちに

この原理は、「特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断する」というもの。テレビ番組に足された観客の笑い声や、「みんながやっていますよ」という勧め方はまさにこの原理を応用している。


この章では、次のフレーズが気になった。

多くの人が同じことをしていると、私たちは自分が知らない何かを知っているに違いないと思ってしまうのです。(p258)

行列にならぶ心理もそうだし、パニック発生の原因についても同じことが言えそうだ。

僕は天邪鬼なのでそもそも行列は避けるのだが、並ぶ必要があるときにはなるべく周りの人と会話をすることにしている(「何かあったんですか?」「すごいですね!」「いつから並んでいるのですか?」等)。話をきいてみると、自分が知っているのとは違う情報が得られ、無駄に時間をすごさずに済むこともある。

好意──優しそうな顔をした泥棒

好意のルールは、「人は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある」と説明されている。
これ自身は、とても自然な心理・感情である。

そして、好意については5つの要因も挙げられている(身体的魅力、類似性、称賛、接触、連合)。
5つめの「連合」はわかりにくいが、要するに好意を感じるものと何かのつながりを持たせる、ということ。人気モデルをCMに使って販売促進するなどがそれにあたる。なお、連合は、悪い出来事に対しても起こるので、悪天候を伝える気象予報士に連合が起きて、嫌悪感をもたれる、という笑えない事例もある。


この章でのポイントは、「好意をもっている相手」と「相手の申し出の内容」を心のなかで切り離して、申し出のメリットだけを考えて承諾するかどうかを決定しよう、ということ。 p.321にもあるような「予想以上に早く、しかも強い好意を抱いてしまった」という感情の有無が、何らかのサインになるのかもしれない。

権威──導かれる服従

本章の冒頭、スタンレー・ミルグラムの電気ショック実験についての記述がある。

実験の目的は、まったく別の疑問──何の罪もない他者に対して、苦痛を与えるように指示された場合、普通の人はどの程度の苦痛まで与えようとするだろうか──の解明でした。(p.334)

この実験では、想像以上に多くの人が「権威に対する服従」をしてしまう結果が残っていて、思わずゾッとしてしまう。自分だったら実験中止にできるだろうかと考えながら読んでいた。

なお、「権威」のシンボルとして挙げられているのが、肩書き、服装、装飾品の三種類だ。
特に、肩書きから権威を感じることは多い。大学教授、医学博士、代表取締役/CEO などの肩書きをもつ人が話すと、つい信じてしまう、ということは僕自身にもある。

というわけで、権威からの要求に対する防衛法として挙げられている2つの質問は、ぜひ覚えておきたい。

  • この権威者は本当に専門家だろうか
  • この専門家は、どの程度誠実なのだろうか

希少性──わずかなものについての法則

この原理はとってもわかりやすい(笑)。
読んで字のごとく、「手に入りにくくなるとその機会がより貴重なものに思えてくる」ということ。

この希少性には大きく2つ、「数量の限定」と「時間の制限」がある。
「最後の1つ!」「店頭に出ている限り!!」や「本日まで半額!」「売り切れ間近!!」なんていうのも、感情に訴えかけてくる。


この防衛法の説明で、納得感が高かったのはこちらの記述だ。

ここに洞察すべき重要な点が潜んでいます。その喜びは希少な品を体験することではなく、所有することにあるのです。(p419)

いま手に入れないとなくなってしまうから欲しいのか、そのものを体験したいから欲しいのか。
ここを自らに問うことで、希少なものについてのよりよい決定ができそうだ。

※自宅を見回すと、「所有」のために購入してしまったものがたくさんあるような気もするが…(苦笑)。

防衛法まとめ

ここ1ヶ月ほど読み込んでいた『影響力の武器』。
原著発行から30年たった今でも読み継がれているロングセラーだけあって、普遍的な(あるあるな)6つの原理が書かれている。


最後に、6つの原理それぞれの防衛法を、短いキーワードでまとめなおした。
判断に迷ったとき、「これって騙されてない?」と感じたときに、以下を思い出したい。

  • 返報性:その前に受け取ったものを、販売の手練手管だと考え直す
  • コミットメントと一貫性:自分の過去の発言にはこだわらない、ということを明確に相手に伝える
  • 社会的証明:「みんながやっていますよ」に乗らない(行列と正しいかは別問題)
  • 好意:「好意をもっている相手」と「相手の申し出の内容」を心のなかで切り離す
  • 権威:「この権威者は本当に専門家だろうか」「この専門家は、どの程度誠実なのだろうか」を自身に問う
  • 希少性:権利や物を「所有」したいのか、本当に「経験」したいのかを自問する


自分自身のために、そして、僕と同じように影響を受けやすい誰かのために。

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