Eテレの「達人達」という番組をご存知だろうか?
僕はこの番組のためにNHK受信料を払っていると言ってもいいかもしれない(いや、ちょっと言い過ぎ。他にもEテレ、総合の両方に気になる番組がある 笑)。以前(「人」から学ぶためのテレビ番組 7本)を書いた当時は放送しておらず、2013年に開始した番組で、ここ最近つよい興味をもって観ている。
2015年3月21日は、探検家・角幡唯介さんと僧侶・塩沼亮潤さんの対話がアンコール放送されていた。テーマは「生の輪郭 命のかたち」。
地球最後の未踏地帯を単独踏破した探検家・角幡唯介と、千日回峰行という命がけの荒行を達成した僧侶・塩沼亮潤。極限状態を経験してきた2人による生と死をめぐる対話
http://www4.nhk.or.jp/switch-int/x/2015-03-21/31/28373/
(番組Webには過去3ヶ月分だけ掲載らしいので、番組ブログをどうぞ)
以下、この放送を観て感じたことを…。
修行と探検で向き合った「生」と「死」
番組前半では、塩沼さんが、ひとたび始めれば止めることは死を意味する過酷な修行(大峯千日回峰行*1)の話を。そして、角幡唯介さんが、マイナス50度にもなる北極圏や前人未到の峡谷に挑んだ冒険の話を紹介していく。
この話は、それぞれの著書に詳しく書かれているのでぜひ読んでみたい。

- 作者:亮潤, 塩沼
- 発売日: 2008/03/10
- メディア: 単行本

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)
- 作者:角幡唯介
- 発売日: 2013/07/25
- メディア: Kindle版
おふたりとも「死」に限りなく近づいた瞬間があり、だからこそ「生」を強く意識したと語っていた。
その一方で、漁師や農家の方など
(期限をきめず)
自然と向き合って毎日を過ごしている人には敵わない
と話していたのが印象的だった。
「死ぬのは怖いですか?」への答え
番組後半、原生林の中に場所を移して話し合う二人。
対話の終盤にさしかかり、角幡さんが「もうひとつ、僕聞きたいことがあって…」と切り出したのが、「死ぬのは怖いですか?」という質問だった。
塩沼さんは、笑いながら「何回か死にかけているので、もう怖くもなんともなくなった」「死を意識するっていうことは全くなくなった」と答えたあと、こう語った。
ただ 生きられるうち、精一杯 生きよう
っていう気持ちですね
自分の力を 十二分に発揮して この世で終わりたい
質問した角幡さんは、「僕はやっぱりまだ怖いです」「子どもができてよけいに怖くなりました」と正直に語る。そのうえで、冒険に行く理由をこう述べていた。
満足のできる充足した日常を過ごすことによって
自分の生のかたちが曖昧になっていくような怖さがあるんです
・・・
寒さとか風とかに叩かれて
自分の生きているかたちを感じたい
という気持ちが強いですね
「生」とは身体の状態を指すのではなく、
誰にでも訪れる「死」という瞬間の直前まで続く、心のあり方なのかなと感じた。
命のリレー
対談の最後をしめくくるかのように、
塩沼さんが語った次の言葉は、心にふかく染み入ってきた。
死というのは 命のリレーだと思うんです。
・・・
生きるということは ものすごく素晴らしいことだし、
死というのも決して怖くはない。自然なことだと思う
・・・
やがていつか 自分の身体が朽ちはてて あの世に還れたら それだけ
実は、この文章を書いている途中、お世話になった方が107歳で大往生された、との知らせが届いた。
期せずして、バトンを静かに渡す日ついて、思いをはせることとなりました。
合掌。
関連エントリ&関連本
「生」と「死」について、これまで考えていたことの断片メモ。
(森山直太朗さんの「くたばる喜びとっておけ」に共感)
(自分がバトンを渡す日にこの曲のような気持ちになれればいいな、と)

どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)
- 作者:中島 義道
- 発売日: 2013/10/14
- メディア: Kindle版

- 作者:岡 檀
- 発売日: 2013/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
追記
その後、『生き心地の良い町』の読書会を開催。結果をレポートにまとめました。ご興味あれば、こちらもどうぞ!
『生き心地の良い町』オンライン読書会、開催しました! ~ 【CMC読書会04】 - ヒト感!!
*1:大峯千日回峰行を満行すると、大阿闍梨(だいあじゃり)の称号を得る。吉野・金峯山寺 1,300年の歴史のなかで塩沼さんが2人目