野村恭彦さんの『裏方ほどおいしい仕事はない!』を読んだ。
- 作者: 野村恭彦
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2009/10/15
- メディア: 単行本
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本書のテーマは「事務局力」。
「事務局」というと、企業や組織の中ではつい軽視されがちな役割に思える。だが、野村さんは「事務局こそが組織を動かすのだ」と力説する。
なぜなら、会社は、一人ひとりの心理で動いているからだ。それを理解すれば、テコの原理で会社は動く。(p.16)
そのためのポイントとして本書であげられているのが「雪かき仕事」である。
これは、内田樹さんの言葉として紹介されており、
誰の義務でもないけれど、誰かがやらないと結局みんなが困る種類の仕事
であるけれど、一方、世の中からマイナスの芽を少し積むことでもあるため、
「世界の善を少しだけ積み増しする」仕事
でもあると紹介されている。
野村さんの主張は、組織内にある「雪かき仕事」をさがして人知れずコツコツと続けていくことで、少しずつ影響力をもつということ。裏方的な動きを信条としている僕も、この主張にはすごく納得感がある。
このような「雪かき仕事」を続けていくときに登場するのが「恩義の銀行」*1である。
人は自分の人生で、誰かのために何かをしてあげることで、恩義の銀行へ貯金をしており、そして何かをしてもらうときにその貯金を下ろすというのだ。
恩義の銀行は実際の銀行と違って、「預けても下ろしても貯金が増えていく」という性質をもっている。そのかわり、どんどん使わなければならない。使わないでおくと、だんだん消えていってしまう。
このブログに何度か書いている「信頼の貯金」という言葉もほぼ同じことを語っている気がする。トム・デマルコ氏の『ゆとりの法則』でみつけて以来いろんな人に「信頼の貯金をためよう」と話しているのだが、その預け先が「恩義の銀行」だというつながりが見つかり、なんだか嬉しい。
このほか、『裏方ほどおいしい仕事はない!』には、「事務局力」を活用することで、自分のまわりのグループ、部門、部門横断、全社、さらには社会を変える可能性が書かれている。
「いまいる世界をもっとよくしたい」と考えていながらうまく動けていない人に、初めの一歩をみつけるきっかけになる一冊だ。
関連エントリ
- 作者: トム・デマルコ,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2001/11/26
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*1:野村さんによれば、「恩義の銀行」はパウロ・コエーリョ氏の自伝的小説『ザーヒル』(the Zahir)に登場する考え方だそうだ。