たったひとつ。いい響きだ。
7つの習慣、十三の徳目、101の方法、50のコツ、256の法則 etc.
世の中にはいろんな成功法則があるけれど、「たったひとつ」と銘打ったものは少ない。
本書『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』は、次の3つの立場ごとに「すぐれた人が実行しているたったひとつのことは何か?」を解明していこうというもの。
- リーダー
- マネジャー
- 個人(の持続的な成功)*1
バッキンガム氏は「たったひとつのこと」を宣言することにも意識的で、問いへの核心となる答え(文中では「隠れた原則」とも書かれている)と呼ぶためには以下の3つの条件を満たすべきと考えた。
- さまざまな状況に幅広く適用できなければならない
- 乗数のような働きをしなければならない
- 行動の指針にならなくてはならない
本書では、これら3つの条件をクリアした「たったひとつのこと」が書かれている・・・はず(笑)。
マネジャーは個性を活かす
すぐれたマネジメントについて、本書ではチェッカーとチェスを例にあげて説明されている。
両者の本質的なちがいは駒の動き。それぞれ独自の動きをする駒を使って勝利を得るのがチェスであり、みな同じ動きの駒を使うチェッカーとは大きく異なる。
そこから、すぐれたマネジャーなら誰でも知っている「たったひとつのこと」を次のように定義している。
部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用すること。(p.95)
この定義には大いに納得。だが、実行するとなるとなかなか悩ましい。どこまで知ればいいのか、何を知ればいいのか…。ゴールがないように思えるのだ。
これに対してバッキンガム氏が提示しているガイダンスは以下のとおり。
- その人の強みと弱みを知る
- その人にとって何が引き金となるかを知る
- その人独自の学習方法を知る
これらをまとめ、どう使うかを考える。以前別の本で読んだ「頂点リスト」というのもこれと同じ考え方だ。実行してみよう。
リーダ−はよりよい未来を明確に示す
バッキンガム氏のリーダーシップの定義は「よりよい未来に向けて人々を一致団結させること」。これも直感的で分かりやすい。
人類学者ドナルド・ブラウンによれば、人種や国籍によらず人間がもつ普遍特性というものが372個あるそうだ*2。これらはおおきく5つに分類することができ、リーダーはそのうちの1つ「未来に対する不安 − 明確さへの欲求」に最も注目すべきだと説く*3。なるほど、納得な感じ。
ここでルティ・ジュリアーノ市長やブレア首相をも例にあげ、リーダーが実行すべき「たったひとつのこと」を以下の一文に集約している。
普遍的なことを発見して、それを活用する。(p.147)
「普遍的なこと」とは、具体的にいうと「誰のために働くか」「核となる強みは何か」「核となる尺度は何か」「今日できることは何か」についての明確な指針、のことを指す。
この指針は必ずしも「正しく」なくてよい。不安を打ち消し、欲求に応えるには「明確である」ことこそが大切なのだ。
なお、個人的には「リーダーはコートに立つ」という表現にポンと膝をうつおもいがした。コートの外にいるマネジャーとの違いもここにあるように思う。
個人の成功のためには「何をしないか」を決める
タイプのまったくちがう3人の「成功し続けている人」を例にあげ、彼らに共通することを見出している。
結果、でてきた「たったひとつのこと」はこちら。
自分がしたくないことを見つけ出し、それをやめる (p.234)
強みを見つけ、磨きをかけるために「したくないこと」へかける時間を徹底的に削減する、ということ。このあたり、前著『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』で紹介されていた論や、StrengthsFinder にも通じるところがある。
わかっちゃいるけど、「したくないこと」をやるハメになるのはこんな事情から。
継続的な成功がこれほど手に入りにくいのは、不幸にもあなたの強みがほとんど自由を与えられていないからだ。あなたが強みを活かして最初にいくつか成功を収めたとすると、ほかの人は(中略)あなたに新しい機会、新しい仕事、新しい役割を与えようとする。そのうちのいくつかはあなたの強みを必要とするかもしれないが、多くはそうではない。継続的な成功の秘訣は、どれが自分の強みを引き出すか、どれが引き出さないかを知ること、そして後者をこばむ強さを持つことにある。(p.234)
なんだか身につまされるなぁ(笑)。
自分ごととして考えるとともに、マネジャーとして他メンバに対しても同じようなことを考えていこう。
最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
- 作者: マーカスバッキンガム,Marcus Buckingham,加賀山卓朗
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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