はてなブログの今週のお題は「人生に影響を与えた1冊」とのこと。
ここ2週間 twitterで話題になっていた「本棚の10冊で自分を表現する」というハッシュタグがあったが、はて、このお題は狙ってなのか偶然なのか(笑)。(僕も、前回エントリで10冊を選んでみた)
実をいうと、先日の10冊本エントリで、あえて選ばなかった本が1冊ある。
理由は、「(今の)自分を表現する」というテーマからずれると思ったから…。
ただ、今回のお題にはピタリと合いそうだ。
そんなわけで、「人生に影響を与えた1冊」として、また「言葉のごちそう」の記録としても投稿しておきたい。
(以下の紹介は、2004年11月の旧ブログ記事をもとに加筆・更新したもの)
『生き方、すこし変えてみないか』/弘兼憲史
「なりたい自分とのギャップが大きくて…」という症状にガツーンと効きます!
僕がこの本に出会ったのは確か1998年頃のこと。
社会人6,7年目で仕事には慣れたものの、まだこれといった専門性を身につけていない自分に対して、漠然とした不安感・焦燥感を感じていた。
そんなとき、会社帰りの本屋で偶然出遭ったこの本に衝撃を受け、大事なことを教えてもらった。
教わったことの1つめは、「なりたい自分」をイメージすること自体が尊い、ということ。現状と理想の姿とのギャップに悩むのではなくて、今この瞬間にどう行動すれば「なりたい自分」に近づくかを考えるだけでよい、という記述に納得感があった。
もう1つは、気負わずに行動するのが一番だ、ということ。準備万端に整ってなくていいから、静かな、それでいて迷いのない一歩を踏み出すことがやがて大きな動きとなる。とかく「逆転満塁ホームラン」をねらって大振りになりがちだけど、「短打」をコツコツとつみかさねていくことが、結局のところ近道となるのだ(そういえばイチロー選手もそんなことを言ってたっけ)。
キーフレーズ
上の2つの教えは、本書のなかで以下のフレーズとして紹介されていた。
- 「なりたい自分」に続くひとすじの道がある
- 静かに、かつ鮮やかに一歩を踏み出せ
いずれもリズムよく力強い言葉だが、2番目のフレーズは弘兼さんの友人のエピソードとしてこんな風に書かれている。
学生時代に友人二人が海辺でキャンプをした。
一人はキミだと思っていい、そしてもう一人は、キミの友人たちの一人を当てはめてもらっていい。
(略)
数日過ごした最後の晩、二人はケンカになった。
ともかく酔っていた。
二人ともかなり興奮してしまい、殴りあったわけではないが、もう明日から別々に行動しようということになった。
(略)
キミが目を覚ましたとき、友人の姿はなかった。
夜はとっくに明けていた。
(略)
ノロノロ起き上がって、長い砂浜の向こうを見ると、波打ち際に友人の足跡がずっと続いている。
起き上がって、枕にしていたリュックを背負い、ただ歩き出したという足跡だ。
足跡はそこから何のためらいもなく、まっすぐに霧の中に伸びていた。(p.142-143)
読後15年以上たった今でも、この部分は映像として記憶に刻み込まれている。
「鮮やかなもんだな」「ためらわずに踏み出してあった一歩が悔しい」というセリフが、自分ごとのように胸にせまってきたのだ。
弘兼さんは、「第一歩を、静かにかつ鮮やかに踏み出す」ことが、「なりたい自分」へ近づく大切な一歩だと語る。動くことで近づくのではなく、新しい感じ方や新しい考えがそこから始まるからだ、と。
本書は、僕が自分を好きになるきっかけにもなった、大切な1冊。
過去の(そして今の)僕のようにモヤモヤと悩んでいる人で、弘兼さんの熱い語り口調が苦手じゃない人へ、強くオススメしたい。