ヒト感!!

人生をハッピーにするヒト・モノ・コトバ、広めたい

「強い絆」は重すぎる!? ~ 『生き心地の良い町』オンライン読書会で学んだこと

このエントリーをはてなブックマークに追加

f:id:hito-kan:20150404002141j:plain


「絆は強い方がいいのだろうか?」

そんなことを考えさせてくれたのが、岡檀(おか・まゆみ)さんの著書『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』だ。

『生き心地の良い町』


(本ブログ執筆時のレビュー21件中、20件が★5つ!)

地域コミュニティが住民の精神衛生にどんな影響をあたえるのか。
大学院でそんな研究をしていた岡さんが、日本国内でも極めて自殺率が低い 徳島県・海部町(現・海部郡海陽町)と出合い、現地に入って住民の方たちと丁寧な話し合いを重ね、国内各地のデータと比較・分析するなかで、その理由を明らかにしていく。


真面目なテーマにもかかわらず、堅苦しい学術書の雰囲気を感じないのは、ふんだんに登場する海部町の方々との会話文のおかげだろう。「迷いよん?」「ほやから」「話よったんじぇ」などのほっこりした徳島弁(阿波弁?)が柔らかい雰囲気を醸し出している。(父が徳島出身の僕には耳馴染みのある響き&リズムだったので、読みながら何度も笑顔になった)

5つの自殺予防因子

岡さんが海部町のフィールドワークの結果たどり着いたのは、これまで言われていた自殺危険因子ではなく、5つの「自殺予防因子」があるってこと。

  1. いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
  2. 人物本位主義をつらぬく
  3. どうせ自分なんて、と考えない
  4. 「病」は市に出せ
  5. ゆるやかにつながる


僕が個人的に気になったのは「ゆるやかにつながる」の箇所。次の記述がある。

海部町では、「ゆるやかな絆」が維持されている。
(略)
隣人間のつきあいに粘質な印象はない。基本は放任主義であり、必要があれば過不足なく援助するというような、どちらかといえば淡白なコミュニケーションの様子が窺えるのである。(p.83)


本書で紹介されているアンケート結果によれば、自殺多発地域であるA町では「日常的に生活面で協力」が最多回答(44.0%)だったのに対し、海部町では「立ち話程度」と「あいさつ程度」のつきあいが多く(それぞれ 49.9% と31.3%)、かなりあっさりしたつきあいを行っている、のだとか。


もちろん、絆はないよりもあった方がよいと思うが、他の地域での絆は精神的に重いものになっているのかもしれない。


海部町の特質は、他にも次のような言葉で紹介されており、このあたりにも軽やかさを感じる。

  • 関心と監視
  • スイッチャー
  • 援助希求
  • 言葉だけでなく態度
  • 生活していく上で賢い
  • 住民気質=自殺対策の鍵
  • みせづくり=サロン機能
  • 一度はこらえたれ
  • いいとこ取り
  • “どうぜ”は言わないキャンペーン
  • 野暮ラベル


「スイッチャー」「一度はこらえたれ」「野暮ラベル」はとても気になる。

オンライン読書会、始めました

本書の発売は 2013年7月なのだが僕が知ったのはつい先月のこと。コミュニティ運営者が集まるFacebookグループ(コミュニティマネージャーズ・コミュニティ(CMC))で教えてもらったばかり。


読んでみて感じたのは、地域コミュニティに限らず、企業内コミュニティやテーマコミュニティなど、さまざまなコミュニティの生き心地や居心地のよさを考えるのにとてもよい本だな、ということ。


そんなわけで、これらテーマをもっと考えるために、CMCのサブグループとしてオンライン読書会を立ち上げた。
https://www.facebook.com/groups/1594663167442181/

「CMC読書会」は、コミュニティ運営に役立つ本を、隔月1冊課題図書として選び、おもにFacebook上でオンラインでやりとりする形で運営しています。

■第4回開催中!■
 『生き心地の良い町』(岡檀 著)


本テーマに興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。
こちらからどうぞ。

関連リンク

「be」フロントランナー

2014年9月 朝日新聞 be on Saturdayでの岡さん紹介&インタビュー記事(無料会員登録すれば全文が読めます)。
http://www.asahi.com/articles/ASG8Z3JY9G8ZUCFI001.html

http://www.asahi.com/articles/ASG8Z3JYBG8ZUCFI002.html


現代ビジネス 対談記事

2014年8月に、岡檀さん、末井昭さん、小堀純さんによる鼎談イベントが開催されたそうです。
イベントでの対話を紹介した現代ビジネス記事は、たっぷりボリュームで読み応えあり!