ヒト感!!

人生をハッピーにするヒト・モノ・コトバ、広めたい

『「へんな会社」のつくり方』/近藤淳也

このエントリーをはてなブックマークに追加

先日読んだ梅田本での惚れっぷりにあてられて(笑)、今度は近藤本

1ヶ月前に「はてなダイアリー」へ引越してきてから、「はてな」の各種サービスにすっかり魅了されているのだが、この本で生みの親である近藤さんの考えにふれ、さらにはてなの将来にワクワク感をもつようになった。

いつものように、気になった箇所を抜書きする。(仕事術系の話もおおいに興味はあるけれど、このエントリではあえて違う視点でチョイスしてみた)

ここで大事なのは、「その情報を出すべきかどうか」を、情報発信者が判断しないということです。すべての情報を出しておいて、情報閲覧者が「その情報を読むべきかどうか」を判断すればよい、と考えるべきです。

ユーザに対する情報のあけっぴろげさで有名なはてなでは、その大前提として社内での情報共有(=情報の私物化禁止)が徹底している。これは近藤さんの「情報隠蔽」に対する嫌悪感からくるもののようだ。

情報が出す側がフィルタリングすることで生んでしまう疑心を極力排除する、というポリシーは頭では理解できるが、いざやるとなると本当の誠実さや強さが必要になるはず。

はてなって、根源的に各ユーザーへの信頼を絶対に置く、絶対的に信頼するところがあるじゃないですか。それは崩したくない。
 (中略)
言いたいことも言えないようにしたいんじゃなくて、みんなが少しずついろんなことを学びながら、いい社会になってほしいっていうのがあるんですよね。そういうことに貢献したいから、迷っちゃうんだと思んですね。

くさいものにはふたを、なんて考えは近藤さんの頭にはないらしい。どこまでもまっすぐにオープンにすることで、ものごとは本来あるべき姿に自然と落ち着いていくのだ、という世界観を感じる。自然界での「自律系」や「創発」というものも、実はこういう哲学のもとで生まれているのかもしれない。

はてなという会社をやっていて、罪悪感が唯一あるのはバカみたいに電気を使っていることなんです。そこだけが罪悪感で、あとはけっこういいことをやっていると思っているんですよ(笑)。
 (中略)
だって、僕たちがやっていることは誰を幸せにして、誰を幸せにしていないのかっていう、プラスとマイナスの収支をプラスにしていかないと、はっきり言ってやらないほうがいいと思うんですよ、僕は。

見すえている次元が高い。こんなにも個人ユーザを楽しませる数々のサービスを提供しつつも、ユーザでも顧客でもなく社会に対する「収支」を語る姿に嘘を感じない。発電のアイデアも、風車、地球外太陽光、原発などなどスケールがでかいのだが(笑)。


そんなわけで、この本は「はてな」ユーザにこそおすすめ。


「はてな」って会社をますます応援したくなり、「はてな」のサービスをますます楽しく使えるようになることでしょう。

「へんな会社」のつくり方 (NT2X)

「へんな会社」のつくり方 (NT2X)

(Art direction、design:Uya)

おまけ:近藤語録

読みながらたくさんページの端を折った。せっかくなのでさらに近藤さん語録として抜書きを…。

  • 僕はなぜか、「世の中は、誰かが適当に作った、とんでもなく“でたらめな仕組み”で動いている」という世界観を持っています。
  • 誰もが当然と思って使っている仕組みや環境に対しても、常に「本当にこれがベストなのだろうか?」と疑ってしまいます。(中略) なぜこんな天邪鬼で、非効率で困難な世界観を持ってしまったのでしょうか。
  • 情報共有とは、「自分のこと」を「多くの人のこと」に変える方法であることに気づきます。
  • 起業家に向いているのは、大富豪と大貧民を両方楽しめる性格の持ち主だと思います。
  • 履歴書と言うのは1日あれば誰でも作れてしまうわけですが、1年分のブログというのは1年間かけないと作ることはできません。
  • 僕は個人的に「駐輪場はどこですか運動」というのをやっていて、仕事や用事でオフィスビルやホテルに行くと、大体入り口で「駐輪場はどこですか?」と訊くようにしています。
  • 新しい遊具の面白さを感じることができる最低限の機能ができた時点でオープンし、たくさんの子供たちが自由に遊ぶ様子を眺めながら、子供たちの要求に合わせて改良を加えることができたら、より素晴らしい公園になると思います。
  • いつまでもプロトタイプであり、かつ最初から製品である、という状態が、今のはてなのサービスなのです。
  • ありきたりな正論が「不確定な可能性」を削いでいないかを一度考えてみることが大事です。
  • 誤解を招いているのは惜しい。と考えて始めたのが「社内ミーティングの公開」でした。
  • 自分たちの頭は万能ではないことを、いつも忘れずにいたいものです。
  • これらの手法*1は実際の重要性以上に注目されすぎているようにも感じます。(by 水野貴明さん)
  • ちょっと引いた場所でなら発言できる、という人がすごく多かったんですね。
  • 子供にハサミを与えたら昆虫をバシバシ殺しはじめたときに、ハサミを取り上げるようなことはあまりしたくない。
  • むしろ「妥当な結論」をいつも出してくれるのなら「任せておきたい」というのが本音だなっていうのがだんだんわかってきた。
  • 「ものづくり」ですよ、はてながやることは。
  • それで光る。どうせなら光らせたい。ガラスで「はてなマーク」を築いて、夜になると「大文字(だいもんじ)」ならぬ「はてな文字(もんじ)」が光る。すごくいいと思いません?*2
  • そういういたずらっ子精神が今は必要なんですよ、きっと。
  • 嫌いな人に会ったことがないんです。みんなけっこう面白くって。
  • 風さえ吹いてりゃはてなが回って、誰にも迷惑をかけていないとなると、けっこう自律系じゃないですか。風で人が幸せになる装置を作ってる。面白いと思いません?
  • でも今だったら自民党に入りたいですね。(中略)次の法律を考える方が面白いと思いますよ。だって、考える、作るんですから、ものづくりをしてるじゃないですか(笑)
  • みんなどこかで「本当にやりたいこと」を我慢をしているような感じがします。
  • どうすればもっと良くなるかを考える、良いと思ったら試してみる。この本に書いたことは、全部そうやって生まれてきました。たったそれだけのことです。あなたにも絶対出来るはずです。

*1:あしか、立ったまま会議、など。

*2:本書内でも使われていたイメージ図はこちらに→http://d.hatena.ne.jp/DocSeri/20051128/1133167842